「tan.」 -タンジェント-
メーカー TJR
生まれて初めて乗った船
僕、御門明(みかど あきら)は小さな島へ降りた
見たこともないような島の町
見たこともないような青い空と
見たこともないような青い海と
そして
見たこともないような変な仲間……

船の上で出合った同い年の大家さんに、家まで案内されて日傘に隠れてしまいそうな、日本人形のような小さな女の子と
金髪だけど袴姿の外国人がついて来る
海の上で出合った内気なクラスメイトとは、最初は挨拶も出来ないで
無口で気難しいクラスメイトには、どういうわけか睨まれる
困った先輩にはからかわれて
食えない先生にはケムリに巻かれ
ばかでかい船長には圧倒される

変な連中に囲まれて、僕はどうにか文句を言う

Tangent : 無関係な物語

「僕は君らと無関係 接するところは何もない」

一人がいい
僕は言う
ひとりがいい

通じているのかいないのか
皆は不思議そうな顔をして
次はいっせいに笑い出す

「行こう!」 「話そう!」 「遊ぼう!」

一緒に!!

……気がつけば、僕は皆と歩いている

tangent : 接する事

触れ合う軌跡

山から吹く風 海から来る風
見たこともないような輝く朝日
見たこともないような綺麗な夕陽
見たこともないような暗い夜と、それを照らす星明り

その眩しさに目が眩みながら、僕はどうにかそれを掴む
皆の笑いに包まれて

背中を押されて踏み出した、眩いばかりの光の中で

僕が掴んだのは誰の手だろう?

(公式より抜粋)

HOOKの姉妹ブランドとして設立して出す処女作。

シナリオではまず各キャラがよかったと思いました。個性ということで考えるとここまでバラバラかつ特殊性(水に濡れると元気になる、イギリス人)を持ったキャラが出てくる作品は珍しいと思いましたよ。その中特に気に入ったのは「鬼兵衛」でしたよ。全てのルートにおいて彼が絡んできますし、彼の発言は主人公を後押しするものであったり、また彼の行動が主人公の助けになるというように発言、行動すべてかっこよかったですからね。また他のキャラ達も主人公を助けたりすることでこの作品のコンセプトである「人との繋がり」というものを表せていたように感じました。
またキャラ同士のからみも見ていて楽しかったですね。数自体はそれほど多くないのですが、かなたとゆきんこのかたみは私としては一番面白かったです。

ただ共通ルート的なものでは話がそれほど面白くないように思えましたね。先ほども書いたようにキャラ同士のからみが少ないために、主人公が狙っているヒロインをストーカーする→主人公とそのヒロインとの他愛ない会話→一日の終了という流れがほとんどとなっているために面白みに欠けるものとなっているように思えましたね。その他愛ない会話もつまらないものが多かったために序盤はかなり暇かもしれないです。
また序盤に大きく張ってある伏線もそれほど話とは関わってこないのもどうかな〜と思えました。主人公の雨や雷が嫌いな理由の説明はちゃんとなされていたのですが、それが序盤にて全て明かされるために後半の個別ルートではそのことは関わってこないということになってますしね。…手首を押さえてたのは単なる癖かどうかすら分からないままでしたしね。
そして一番微妙であった点は、主人公の成長というテーマがあるにも関わらずその成長や人との付き合いの大切にしていくようになるといった変化があまり見られないというのはどうかと。島に着いてから一年が経過し、その間に変わったとなっているのでひねくれていたころの主人公が、どのように人と関わることがいいことであると感じるようになっていく様子が分からなかったですからね。すでに人との繋がりが大切と分かりかけている主人公となっているために、やや盛り上がりが欠けると思いますしここが一番もったいなかったように思えましたよ。

まぁこれは好き嫌いが分かれるところではあるとは思いますが、恋愛というその惹かれていく様子や相手が自分に興味を持っていくというシーンがあまり描写されないままに付き合いだす〜と言ったものが多くあったように思えましたね(やや、砂城、ゆきんこルート)。確かに普通の生活の中でいいな〜やかわいいな〜など思い、他愛ない会話を繰り返していくうちに告白するというのはもっとも普通な恋愛といえると思います。ただプレイヤーは主人公とシンクロしていないとその様子は分からないものであり、シンクロしてないプレイヤーだったら主人公がとあるイベントにて惹かれたことはなんとか分かるけど、何でヒロインが主人公のこと気に入ったの?というような感想がでてくるんじゃないかなと思いますしね。
私としては現実的かつ日常の中で好きになるというのはこんなものだなと思っているのでいいかとは思いますが、恋愛描写が薄いというような印象も同時に受けるじゃないかなと。

絵に関してはやや幼い感じの絵となっているように感じましたね。特にHCGにおける幼さなんてホントやばかったです。ただイベントCGの枚数はそんなに多いわけではなく(Hシーンを覗くと各キャラ16枚ほど)、立ち絵の変化もそんなに多いというわけではないので面白みに欠けるものであるようには思えましたね。一枚一枚の質は十分満足でしたけどね。

音楽に関してはいい感じかな〜と。OPムービーもほどほどと言った感じで取り立てて感想はないですね。

Hシーンに関しては各キャラ回想が2個となっており、それなりにエロく作られていました。尺がそこそこに長く実用的といえば実用的ではないかな〜といったところですかね。
主人公がHの時にだけやたらプレイボーイの様に感じたのが妙に笑えましたよ。
「それで興奮しちゃったの?ヤラシー子だ」「ここ気持ちいいんだ…」「何をしてほしいんだ?言ってごらん」などホント笑わせてもらいました。

HOOKの姉妹ブランドとして出した作品はHOOKの作品よりも上手に作られているんじゃないかな〜と思えた作品(かなた、砂城ルートのみですが)。まぁ言っちゃえばよくある萌えゲーといった感じなんではないでしょうか?とりあえず言いたいのは…
先輩を攻略不可能にしたのはなぜですか!?ということですよ(ぉ これでファンディスクだしたりしたらいきなりこのメーカーが嫌いになりそうな気がします…。そういいつつも一応今後に期待ということで。




キャラ別紹介

・やや…このルートでは恋愛描写が一番薄いと思えるような設定でしたよ。ややが以前から主人公のことを好きであるという設定のために、惹かれあう様子や恋愛的な描写がほとんどありません。あるとしても主人公が自分ってややのことが好きかな〜とちょっとだけ悩む時だけでしたしね。まぁ告白の仕方も合鍵を渡すというというものであり、これが告白の代わりなのかと分かったのはこの後のことでしたし…。ややヘタレの主人公のように思えましたよ。
話の展開としてはややが事故で記憶を失う〜というまぁありきたり(?)な話となっており、まぁ記憶を取り戻してハッピーエンドと予想を裏切らない展開でしたよ。
…主人公がややの記憶を取り戻すために初めてややと会ったときを再現しようとヘタレの根性を見せたにも関わらず島を出るという行動だけで記憶が戻るっていうのもなぁ…。主人公がむなしく見えました('A`)

・ゆきんこ…病弱な子。とある理由から自分の体にコンプレックスを持っており、そんな体じゃ自分は主人公とは付き合えない〜というまぁこれもよくある萌えゲー的な展開。ゆきんこが自分に自信を持つようになり主人公と分かり合えるという展開もまぁふ〜んと言った感じですかね。正直あまり印象に残りませんでした…。ちなみにこのルートの主人公もややヘタレです。

・かなた…不良娘。単に心を開かなくなったということだったんですけどね。
このルートでは細かい描写がひたすらうまい!主人公がかなりかっこいい!などのような感じでしたよ。どのようにうまいかというとまずはキャラの惹かれあっていく様子。かなたに興味を持った主人公と、かなたが主人公のことを邪魔に思わなくなっていく様子は丁寧にかかれていたために話はスムーズに進んでいるように感じました。そして打ち明けることになるようになったときはホント感動でしたよ。
そして主人公はこのルートでは今までにないぐらい行動力に満ち溢れています。相手のことで本気になったり、思い立ったら行動するなどその主人公はかっこいいの一言に尽きますね。特にかなたが心を閉ざした原因となったとあるキャンプ場のコテージ(?)を破壊したところなんてホントかっこよすぎです。
そして遭難したかなたを助けることをしたときの行動は「人との繋がり」という作品のコンセプトが一番よく具体化されているものであると思いましたね。
ホントこのルートはこの作品の中で一番よかった思えるぐらい面白かったです。

・砂城…普段は内気ですが水に濡れると元気になるという謎の特性を持った娘。
このルートでもかなたルートと同じく人との繋がりの大切さというものを上手に表現しているように感じましたね。また主人公の行動力もこのルートでもいい感じです。
船長と勝負を吹っかけた主人公、そしてそれを手伝うことを当たり前のようにしてくれる仲間などよくできていると思いましたよ。

・先輩…砂城の幼なじみにして主人公の先輩。プロローグにてしっかり出てくるし、OPムービーにもちゃんと紹介されているにもかかわらず…
なぜか攻略不可能なキャラです。それはなしだろ…_| ̄|○と思いましたよ。何気に魅力的であり意味深げな発言をしていたりと絶対攻略可能だと思っていたのでへこみましたよ…。

・鬼兵衛…一番のお気に入りキャラ!すべてのルートにおいて彼が主人公に助言や手助けをするのですが、そのフォローの仕方がものすごくかっこいいです。ややルートでは「例え勘違いしたとしてもお前があいつを好きなのは間違いないだろ?」といった発言をしたり、砂城ルートでは何も言わずに主人公を助けてくれたりと…
そんな彼がこの作品の中で一番気に入りましたよ!また日常シーンでもボケキャラをしているのでそのギャップで発言や行動のかっこよさがでるんだろうな〜と。ホント彼は最高です。

シナリオ CG 音楽 Hシーン 私的満足度 総合
13 20 15 20 B 68