灯穂奇譚
メーカー | 水鏡 |
遠き日に繋がる、夏の体温。 灯火は誘う――現と幻の、裂け目へと。 転居から10年の時を経て、生まれ育った山村へと足を踏み入れた 主人公・永井桐人(きりと)。その目的は、 村に遺してきた生家を、完全に引き払うためであった。 成長を遂げた、幼なじみの加茂カナタとの邂逅と、 久しぶりに四肢に染み渡る田舎での生活は、 都会での生活に疲れた桐人の心に、潤いに似た安堵感を与えていた。 しかし。 夜、偶然見かけた二匹の蛍。何気なく、その飛び行く先を追いかけているうちに、 桐人は村で奉られている神社へと導かれる。 そこで感じたのは、幼少の頃には微塵も感じることが無かった、深い闇。 その日から、見慣れた田舎の風景は一変した。桐人の心を徐々に蝕む、 深遠から染み出す空気。彼の心は徐々に虚妄に支配され、 自分自身を維持するための葛藤の時間を必要としていくことになる。 そんな中――誰もいないはずの神社で出合った、一人の少女。 その瞬間、桐人の見知った世界に大きな亀裂が走り―― 彼は、村に埋もれていた禁忌へと呑まれていく。 村に残る、謎の風習。 「夜に大声を出してはいけない」 「夜に人と争ってはいけない」 「月の無い夜に、女性は人前に姿を見せてはいけない」 全て、同じ苗字の村民。 神社の奥に奉られているという“祠さま”。 夏の日差しの裏側にある、月光さえも届かぬ世界。 その目に映る幾多の灯火は、何を導き、何を語りかけるのか――。 (公式より抜粋) 多少のネタバレ(キャラ別紹介では完全にネタバレ)をしていますので、ご閲覧に注意してください。 伝奇ビジュアルノベルのジャンルに属する作品で、ライトノベル的なもののような感じで話は進んでいきます。この作品は古事記のことを題材にし歴史的なもの、銅鐸などを使った神霊的なものと言ったようなものが物語のベースとなっているのですが、非現実的なものとして霊を用いたりと完全に非現実的な話にするよりも現実味を帯びている古事記や継承というものを使うことによって、話に妙に説得力を与えたのではないでしょうか。 …というか話について行きやすいものとなっていたように感じたほうが大きかったですね。完全な伝奇ものではありえない事態がその作られた世界観では当然のものと扱われているというものでは、プレイヤーは取り残されることもあると思いますし。 伝奇ノベルものとしては伏線の張り方がほとんど印象に残らないものであったりしたため、その伏線にはそんな意味があったのかといった驚きはありませんでしたし、またケータイに写っていた目、ナミは本当は何者かなど完全に回収しきれなかった点も数点目立ちますが… 音楽ではOP曲とOPムービーが用意されており、こちらも商業レベルとは遜色がない作りとなっています。ただEDがなかったために、感傷に浸る余裕的なものがまったくなかったのがもったいなかったですね。この話に引き込まれているからこそこんな感想がでるんですけどね。 絵の質の高さは同人レベルではありません。商業レベルでもここまで作れるのか?と思うぐらいの質の高さがありましたよ。ただテキストが絵に覆いかぶさる形であるために、絵のよさが半減してしまっているのはもったいなかったですね。 Hシーンではシナリオゲーである作品であるにもかかわらず、全回想数は5個となっています。絵が上手なのでHシーンにおいてもその質の高さはすばらしいです。ただテキストが絵と同様に覆いかぶさっているのがもったいなかったですね。 すべての面において商業作品と遜色がない、むしろ商業を超越しているように感じた作品。単に私が伝奇もの好きということもあるかもしれませんが、同人最高峰の作品かな〜と思いましたね。 ・カナタ…主人公の幼なじみ。実は主人公が来る3年前に死んでおり、銅鐸、主人公とナミの存在により数日間のみ生き返っています。彼女のルートにおいて、「死」という永遠の別れを彼女が本来生きていないはずなのに、一時的とはいえ生き返ることができ、主人公は母親と共に過ごした思い出というものがあるから「死」を恐れずに受け入れるようになる様子は… ・ナミ…黄泉の国の人間。代々主人公の血縁の者と子を残すということ。要するに主人公の祖母であり、母であるというめちゃくちゃな事態になってます。彼女のルートでは彼女に思いを寄せることによって黄泉の国に魅入られることになります。まぁ現実世界ではなく、黄泉の国の空気に害されて壊れていくといったほうが正しいですけどね。最後まではっきりしない感じで終わったのがもうちょっとなぁ…と言った感じでしたね。 |
シナリオ | CG | 音楽 | Hシーン | 私的満足度 | 総合 |
25 | 25 | 20 | 15 | A | 85 |